LMdS - 夏のあいだ、仕事を忘れて...

10年ぶりに、プロヴァンスの夏らしい暮らしをしてみる…
私は、10年間、まともに8月のバカンスを過ごしたことがありませんでした。石けんをつくり、販売する仕事を始めてからというもの、8月も休まずに仕事をしていました。特に初期の店舗では、8月はクリスマスに次いで忙しい時期でした。
このようなことから、「8月に仕事を休む」ということ自体が、いつの間にか私の中からなくなっていたのです。
でも今年、私は決めました。
休もう。
ただ数日休むのではなく、仕事から完全に離れる。InstagramもFacebookもログアウトする。メールの通知も切る。そして、しばらくの間、何かを考えようとすることさえやめる。
仕事のことも、SNSのことも、数字のことも、予定のことも。スイッチをオフにして、ただ夏を過ごすことにしました。

何もしない時間は、決して無駄ではありません。むしろ、何かを生み出すためには、何も生み出さない時間が必要なのだと思います。頭の中をいったん空っぽにして、静かな時間をつくる。そうして初めて、これまで気づかなかったことや、新しいアイデアが浮かんでくることがあります。
沈黙と何もしない時間もまた、次に進むために必要な時間なのです。
夏を取り戻す
きっかけのひとつは、子どもたちとの時間でした。「海に行きたい」と言われたとき、ふと、自分が水着すら持っていないことに気がつきました。思えば、子どもたちと親子で過ごせる夏には限りがあります。そこで今年は、今しかできないことをして過ごそうと思いました。

本を読んだり、市場へ出かけたり、午後1時には昼寝をしたり。夕食のあとにはゆっくり歩き、息子と川に足を入れ、娘にはプロヴァンスのドレスを着せる。市場ではメロンやタプナードを買い、暑い日の午後は何もせずに過ごす。どれも特別なことではありませんが、そんな時間をゆっくり楽しむことにしました。

「何もしない」ということは、私にとって簡単なことではありませんでした。でも、休むというのは、何かを生産することをいったんやめることでもあります。創造するためには、休息と静けさが必要なのだと改めて思いました。
バカンスは、家を出た瞬間から始まる
プロヴァンスのLuberon (リュベロン) へ向かう道は、私にとってたった200kmほどの距離です。
それでも、車で走り始めると、いつも少し特別な気持ちになります。
高速道路が開けていくと、それまで背負っていた日々の重さから少しずつ離れていくような気がします。途中のサービスエリアに立ち寄って、コーヒーを飲み眠気を覚まして、本棚を眺める。

小さなお菓子を買う。可愛いく美味しいものを見つければ、大変な収穫と素直に喜びます。
目的地に着く前から、もう旅は始まっています。
そんな小さな寄り道まで含めて、私にとってはバカンスなのです。
プロヴァンスの夏は、香りでできている
今年の夏、私はいくつもの「夏の香り」を改めて感じました。古いテラコッタの床を磨いたときに漂う、少し甘く懐かしい香り。

庭で太陽をたっぷり浴びたトマトの葉や、緑色の蚊取り線香。そして、すり鉢ですりつぶしたバジルとニンニクの香り。庭に100年近くあるツゲの木も、夏の空気の中で独特の香りを放っていました。
食べ物にも、夏の香りがあります。
食べ頃を確かめるために切ったメロンの皮、炭火で焼くタイム風味のラムチョップ。市場で飲むモーレスクから漂う甘いアニスの香りや、プールから上がったあとの、塩素の残る髪。そして、ハーブでマリネされた小さなニースのオリーブ。どれも、この夏の時間と一緒に記憶に残っています。
夏というものは、景色だけでなく、香りによって記憶されるものなのかもしれません。目にしたものだけではなく、そのときに感じた香りや味、肌に触れた感覚が重なって、ひとつの記憶になっていく。今回の夏休みは、そんなことを改めて感じる時間でもありました。
そう考えると、私たちが毎日使う石けんも、単に身体を洗うためのものではないのだと思います。
手に取ったときの感触、泡立てたときに広がる香り、洗い流したあとの感覚。そして、浴室や洗面台に残るほんのわずかな香り。そうした小さな感覚もまた、日々の記憶の一部になっていきます。
私は石けんをつくる仕事を10年続けてきました。この夏、仕事から少し離れて暮らしてみたことで、石けんそのものだけでなく、香りが暮らしの中で持つ意味についても、改めて考えることができました。
午前10時、市場で飲むモレスク
ある朝、St Didier(サン・ディディエ)の市場へ行きました。まだ午前10時です。通りにはプラタナスの木が並び、その下には市場の店が出ています。メロンやトマトを買い、少し歩いて、Café du Siècleのテラスに座りました。
そこで飲んだのが、プロヴァンスで親しまれている「モレスク(Mauresque)」です。アニゼットにオルジェシロップを少し加え、水と氷を注ぐ。甘く、アニスの香りがあり、暑い夏の日によく似合う飲み物です。
テーブルには黒いオリーブ。市場のざわめきが聞こえ、テラスでは椅子を引く音がします。そして、時計を気にせず、ゆっくりとグラスのモレスクを嗜む。
これが、私にとっての夏なのです。
午前10時なのに、もう一日が十分に始まっているような気がする。そして、ここから先は急がない。ただ、ゆっくりと時間に身を任せる。休暇ならではの、そんな小さな贅沢です。

そして、仕事へ戻る…
夏の間、仕事から離れてバカンスを過ごし、家に戻りました。不思議なことに、見慣れていたものが少し違って見えました。離れてみることで、今まで気にしていなかったことが気になったり、逆に、これからも大切にしたいものがはっきりしたりするものです。
休むことによって、何かを失ったわけではありません。むしろ、自分がどこへ向かいたいのかを、以前より落ち着いて考えられるようになりました。
仕事を再開する今日が、私にとって残りの人生の最初の日です。

私は、この秋から2027年の終わりまでを、新しい目標を持って過ごすことにしました。もう一度、自分自身の幸せにも、周りの人の幸せにもつながる仕事をつくっていく。そのために、これまでと同じ環境から再開するのではなく、新しい方向へ進んでいきたいと思っています。
長い休暇のあとで、再び仕事を始めるためのエネルギーが戻ってきました。これまで見えていなかったものや、忘れていた感覚も、少しずつ戻ってきたように思います。
夏のプロヴァンスから、これからのLMdSへ
プロヴァンスのArt de Vivreは、特別なものをたくさん所有することだけではないのだと思います。市場で、その季節に一番おいしいものを選び、家族と食事をする。午後の暑い時間にはきちんと休み、夕方になったら外へ出て歩く。香りや味、光や風を感じ、ときには仕事から完全に離れて、自分の時間を取り戻す。
そこには、人生を急がずに楽しむための知恵があります。

LMdS – La Manufacture du Siècleの石けんも、そんな暮らしの中にあるもののひとつとして作り上げています。毎日使うものとして、素材だけでなく、香りや手触り、つくり手の考え方まで含めて楽しんでいただきたい。そんな気持ちを込めています。
それは、今回の夏を過ごして、私自身があらためて感じたことでもあります。10年間、仕事から離れることなく走り続けてきた私にとって、今年の夏は、自分自身や暮らしを見つめ直す時間になりました。
忙しい毎日の中では、仕事や家族を優先するあまり、自分のための時間を後回しにしてしまうこともあります。けれど、少し立ち止まり、日常から離れてみることで、忘れていたものや、本当に大切にしたいものが見えてくると感じています。

休むことは、前に進むことをやめることではありません。また新しい一歩を踏み出すための時間でもあるのだと思います。
プロヴァンスの夏が終わり、季節は少しずつ秋へ向かっています。
私にとっても、LMdSにとっても、これから新しい季節が始まります。
Brune、ニースにて
秋にふさわしいLMdSの石けん
秋にふさわしいLMdSの製品として、LMdS - Nuit Bengale(ナイト・ベンガル)とLMdS - Marouschka(マルーシュクァ)の2品を、皆さまにご紹介します。
Nuit Bengale(ナイト・ベンガル)は、エキゾチックで印象的な香りが特徴の石けん。少し深みのある香りは、夏の軽やかな空気から、落ち着いた秋の暮らしへ移っていく季節にもよく似合います。 詳しくはこちら >

Marouschka(マルーシュクァ)は、やわらかさと華やかさを感じさせる香りが魅力のハンド & ボディスクラブ。穏やかに過ごしたい秋のバスタイムに、香りを楽しむひとときを添えてくれます。 詳しくはこちら >

どちらも、毎日の洗う時間を単なる習慣ではなく、香りや手触りを感じながら過ごす時間として楽しんでいただきたい、LMdSらしい石けんです。


